商標登録の出願ならリュードルフィア特許事務所へ。適切な商標権取得のお手伝いを致します。

商標ニュースレター   No.10

今回も二段書き商標の使用に関する取消審判例をいくつか例を挙げてご説明致します。




1. 取消2004-31408(登録第2197485号の登録取消審判事件)

(1)本件登録商標

「NALDEC」の欧文字と「ナルデック」の片仮名文字とを上下二段に横書きしてなり、第10類「測定機械器具、その他本類に属する商品」を指定商品とするものである。

(2)審判における判断

被請求人(商標権者)が提出した証拠について

(i)被請求人を取引先とする客先の受領日報には、その納品番号「S−A0257−0」欄の部品番号欄には「C176−57−K30−B」の記載がある。また、受領日欄に「7/6」、指定数、納品数及び受領数の欄には、いずれも「36」との記載がある。

(ii)SRSユニットに係る承認申請図中には、右上部にSRSユニットの図示があり、そこには「Naldec」が表記されている。また、中央下部には、部品番号として「C176−57K30−B」が記載され、左やや下の「DETAIL OF CAUTION LABEL」には「エアバック用クラッシュ・センサー」との表示を認めることができる。更に、枠外には「ナルデック株式会社」の表示が認められる。

(iii)写真Aの製品の外装には「Naldec」が刻印されており、部品番号として「C176−57K30−B」の表示及び「Naldec」の表示がある。写真Bの製品内部の回路基板にも「Naldec」の表示がある。

そして、以下のように判断しました。

本件商標は、「NALDEC」の欧文字と「ナルデック」の片仮名文字とを上下二段に横書きしたものであるのに対し、使用商標は、「Naldec」の文字を横書きに表したものである。しかして、両者は外観においては異なるけれども、構成欧文字の綴り字を同じにし、かつ、これらより生ずる称呼「ナルデック」を同じにするものであり、また、観念上での変動はないものである。

してみれば、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めて差し支えないものである。

更に、使用商品は、車両の衝突減速度を計測して一定値を超えたときにエアバックを展開させるように機能する機器であり、本件商標の指定商品中の「測定機械器具」に属すべき機器の一つと認められる。

以上の通り述べて、商標登録を取り消しませんでした。




2. 取消2006-30155(登録第1636820号の登録取消審判事件)

(1)本件登録商標

「ガビッチ」の片仮名文字と「GABICCI」の欧文字とを上下二段に併記してなり、第20類、第24類及び第25類に属する商品を指定商品とするものである。

(2)審判における判断

被請求人(商標権者)が提出した証拠について

(i)被請求人が注文した、「紳士用ポロシャツ」のカットソー指示書及びその納品書に関し、カットソー指示書には、ブランドとして本件商標と社会通念上同一視し得る商標「ガビッチ」の表示及び被請求人の名称が表示されており、かつ、両書類の商品番号が一致する。

(ii)被請求人への下げ札、メタル、印字用シール等の納品書において、当該納品書には、本件商標と社会通念上同一視し得る商標「GABICCI」が表示されている。

(iii)証拠として提出された織ネーム及び下げ札には、本件商標と社会通念上同一視し得る商標「GABICCI」が表示されている。

そして、これらの証拠に基づいて、商標権者によって本件商標と社会通念上同一と認められる商標が使用されていたと認定しました。

以上の通り述べて、商標登録を取り消しませんでした。




3. 取消2005-31066(登録第4028296号の登録取消審判事件)

(1)本件登録商標

「LAB」の欧文字と「ラブ」の片仮名文字を二段に横書きしてなり、第3類「化粧品,歯みがき,香料類」を指定商品とするものである。

(2)審判における判断

(a)被請求人(商標権者)による使用につき、提出された証拠について、次のように説明しました。

(i)「ラブ ネイルシリーズ」と題したチラシには、「LOVE」の文字を表示した「ネイルポリッシュ、ネイルリムーバー」の商品写真が掲載されている。また、同チラシには、「ラブ ネイルポリッシュ01〜08」、「ラブ ネイルリムーバー」について、これらを商品をセットとする旨の「初回納入 各3個/定価 13,050円(税抜)」の文字が記載されている。

(ii)「LOVE ネイルシリーズ」の取扱店の売り場写真には、「LOVE/NAIL ネイルアートで指先注目度アップ1」などと記載された広告のもと、「ネイルポリッシュ、ネイルリムーバー」の商品が陳列されている。

(iii)品名を「ラブ ショカイノウニュウ セット(13050)」とする商品、例えば、「ラブ ネイルポリッシュ」、「ラブ ネイルリムーバー」を各店舗に納品したことが認められる。

そして、以下のように判断しました。

これらの証拠によれば、被請求人(商標権者)は、「LOVE」及び「ラブ」の文字より成る商標を使用した「ネイルポリッシュ、ネイルリムーバー」について、これをセットにして取引をしたと考えられる。

ところで、本件商標は、「LAB」の文字と「ラブ」の文字を二段に横書きしたものであるところ、その構成中の「ラブ」の文字部分は、ローマ字部分の称呼を特定したものと理解される。そして、本件商標中の大文字で綴られた「LAB」の文字が、我国において、親しまれた成語又は略語を理解させるものとは認め難く、むしろ、「実験室、研究所」などを意味する語として知られている「laboratory(ラボラトリー)」の略語「lab」を大文字で表記したものと理解されると見るのが相当である。

してみると、本件商標は、その文字構成より、「ラブ」の称呼を生ずるものであって、「実験室、研究所」などの観念を生ずるものと言わなければならない。

これに対して、被請求人の使用に係る商標中「LOVE」は、「愛、恋愛」などを意味する英語として、我国において広く知られており、「LOVE」と共に表記されている「ラブ」の文字は、「LOVE」の片仮名表記と認識されるものであるから、使用に係る商標中は、その構成文字に相応して、「ラブ」の称呼を生ずるものであって、「愛、恋愛」などの観念を生ずるものと言わなければならない。

してみると、本件商標と被請求人の使用に係る商標とは、「ラブ」の称呼を同じくするものであるとしても、観念において著しく異なるものであり、また、外観上も大きく相違するものである。

従って、被請求人の使用に係る商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標と言うことはできない。

(b)被請求人(通常使用権者)による使用につき、提出された証拠について、次のように説明しました。

(i)商品を掲載したパンフレットの表紙には、「LAB」、「SERIES」、「FOR MEN」の各文字を三段に横書きした標題があり、また、これに掲載された「男性用化粧品」にも、上記各文字が同様の態様で表示されている。更に、片仮名文字による「アラミス ラボ シリーズ」なる文字も表示されている。

(ii)商品を掲載したパンフレット中には、「女性用化粧品」が掲載されており、これら化粧品には、「lab」と「solution」の各文字が二段に横書きに表示され、商品の説明欄には、例えば、「アクティブ ホワイト ラボ ソリューションズ」などと片仮名表記がされている。

(iii)写真の男性用化粧品には、三段に横書きされた「LAB」、「SERIES」、「FOR MEN」の各文字や「SKIN−CLEARING/SOLUTION」の文字などが表示されている。

そして、以下のように判断しました。

これらの証拠によれば、被請求人(通常使用権者)の取扱いに係る「男性用化粧品」には、それ自体独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得る「LAB」の文字が表示されていることが認められるとしても、該文字と共に「ラボ」の文字も使用されており、上記使用に係る商標は、「ラボ」の称呼をもって取引がされているというのが相当である。

また、「女性用化粧品」に表示された「lab」と「solution」の各文字及びその片仮名表記である「ラボ ソリューションズ」の文字は、同一の書体で書され、外観上一体のものとして把握、認識されるというのが相当であるから、その構成中の「lab」又は「ラボ」の文字部分のみが、独立して自他商品の識別標識としての機能を発揮するものと認めることはできないし、本件商標中の「ラブ」の片仮名文字部分の使用は見当たらない。

そうすると、通常使用権者が「男性化粧品」について使用する商標は、その構成文字に相応して、「ラボ」の称呼を生ずるものであり、また、「女性用化粧品」について使用する商標は、その構成文字に相応して、「ラボソリューションズ」の一連の称呼を生ずるものというのが相当であるから、使用に係るいずれの商標も、「ラブ」の称呼を生ずる本件商標とは、同一の称呼を生ずるものと認めることはできない。

従って、通常使用権者が使用する商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標と言うことはできない。

以上の通り述べて、商標登録を取り消しました。




4. 取消2005-31257(登録第2683506号の登録取消審判事件)

(1)本件登録商標

本件商標は、下記の通りであり、第3類「化粧品,香料類」を指定商品とするものである。

(2)審判における判断

被請求人が提出した証拠について

(i)被請求人の商品「ゲルマニウムソックス」の包装箱の現物見本であり、該包装箱には、「BION」及び「株式会社 バイオン」等の表示は認められるが、本件商標の表示は見当たらない。

(ii)被請求人の商品パンフレットには、「BION」及び「株式会社 バイオン」等の表示は認められるが、本件商標の表示は見当たらない。

(iii)「BION ゲルマニウムサポーターのバイオン」の表題のあるホームページには、「BION」及び「バイオン/ゲルマニウム/サポーター」の表示は認められるが、本件商標の表示は見当たらない。

そして、以下のように判断しました。

被請求人は、「BION」の欧文字のみ単独で使用し、併せて「株式会社 バイオン」を使用しているものであって、本件商標を使用していたとは言えない。

してみると、被請求人の使用に係る上記商標と本件商標とは、外観が全く異なるものであり、称呼上も、被請求人は「BION」の欧文字のみを単独で使用し、併せて「株式会社 バイオン」を使用しているものであるから、これらからは「バイオン」の称呼を生ずるというのが相当であるのに対し、本件商標より生ずる称呼は「ビオン」のみであるから、両者の称呼は明らかに異なるものである。

従って、被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標をその指定商品中の「化粧品」について使用していたとは言えない。




検討

前回のニュースレターNo.9でご説明致しましたように、二段併記の商標のいずれか一方の使用においては、二段併記の一方の使用が登録商標の使用と認められるのは、上段及び下段の観念が同一であるときです。

1. 取消2004-31408で取り上げた本件登録商標は、「NALDEC」の欧文字と「ナルデック」の片仮名文字とを上下二段に横書きしてなるものです。この場合、「NALDEC」の欧文字及び「ナルデック」の片仮名文字は造語ですから、これらからは特定の観念が生じません。

しかし、審判においては、これらの称呼は同一であり、従って、観念上の変動はないとして、一方の使用は、本件商標と社会通念上同一の商標の使用と認めています。

2. 取消2006-30155で取り上げた本件登録商標は、「ガビッチ」の片仮名文字と「GABICCI」の欧文字とを上下二段に併記してなるものです。この場合も、「ガビッチ」の片仮名文字及び「GABICCI」の欧文字は、造語と認められますので、これらからは特定の観念が生じません。

審判においては、特に理由は述べていませんが、「GABICCI」の使用は、本件商標と社会通念上同一視し得ると認定しています。この場合も、1の場合と同様に、特定の観念がない場合には、称呼が同一なら、観念の変動はないと認定したと考えます。

以上の1及び2の審判から考えますと、上下二段併記の商標において、上下いずれからも特定の観念を生ぜず、上下いずれからも同一の称呼が一つだけ生ずる場合には、上下いずれか一方の使用は、上下二段併記の商標の使用と社会通念上同一であるとされるということです。即ち、上下一方のみの使用により不使用とはされない可能性が高いということです。

3. 取消2005-31066で取り上げた本件商標は、「LAB」の欧文字と「ラブ」の片仮名文字を二段に横書きしてなるものです。ここで、商標権者は、「LOVE」及び「ラブ」の文字からなる商標を使用していました。

本件商標の「LAB」の欧文字からは親しまれた特定の観念を生ぜず、むしろ「実験室、研究所」などを意味する語として知られている「laboratory(ラボラトリー)」を連想せしめるとしました。そして、商標権者の使用に係る「LOVE」と共に表記されている「ラブ」の文字は、「LOVE」の片仮名表記と認識されるものであり、使用に係る商標は「ラブ」の称呼を生ずるものであって、「愛、恋愛」などの観念を生ずると判断しました。

このように、使用商標と本件商標は観念が同一ではないと判断して、登録商標の使用とは認めませんでした。

この場合には、商標権者は「LOVE」を使用していましたので、これは明らかに「LAB」とは相違します。商標権者が片仮名の「ラブ」だけを使用していたらどのようになっていたのでしょうか。「LAB」の欧文字と「ラブ」の片仮名文字から生ずる称呼は、「ラブ」のみと考えられます。但し、「ラブ」の片仮名文字から生ずる観念は、一般的にはやはり、「愛、恋愛」ではないかと思います。従って、「LAB」とは観念が相違するとして、登録商標の使用とは認められなかったのではないかと思います。

4. 取消2005-31257で取り上げた本件商標は、「ビオン」の片仮名文字と「BION」の欧文字を二段に横書きしてなるものです。ここで、商標権者は、「BION」の欧文字のみ単独で使用し、併せて「株式会社 バイオン」を使用していました。

「BION」の欧文字からは、「ビオン」及び「バイオン」の二つの称呼が生じます。その上、商標権者は、「株式会社 バイオン」を併せて使用していました。これでは、「BION」の称呼を「バイオン」ととられても仕方のないことです。

但し、この場合、「BION」の欧文字のみを使用していたとしても、この欧文字からは上記のように二つの称呼が生じると考えますので、いずれにせよ登録商標の使用とは認められなかったのではないかと考えます。

以上のことから考えますと、二段書き商標の場合には、上下いずれか一方の文字から、二つ以上の観念又は称呼が生ずるときには、上下いずれか一方の文字の使用は登録商標の使用とは認められない可能性が高いと考えられます。二段書き商標を所有する方は注意が必要です。

以上