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商標ニュースレター   No.2

前回の商標ニュースレターNo.1では、いわゆる記述的使用、例えば、商品の内容説明的使用、商品の品質表示的使用か否かが争われた不使用取消審判において、商標登録の使用とは認められずにその登録商標が取り消された審決例をいくつかご紹介致しました。

今回は、同様に記述的使用か否かが争われた不使用取消審判において、商標登録の使用と認められた審決例をご紹介致します。




1. 取消2003-31327(登録第1522371号商標の登録取消審判事件)

(1)本件登録商標:

商標「マンモス」(カタカナ文字で横書にしたもの)

指定商品「第9類 電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」」(指定商品は他にもあるが、取消請求されていないので省略する)

(2)登録商標の使用の態様

(i)第1の使用態様:広告チラシIには、テレビ、ビデオカメラ、電話機、パソコン、パソコン用プリンター等の商品が掲載されており、そこに使用していた商標は、

「第84回 名物催し 大地をゆるがす半期に一度の ビッグセール」の文字と共に、「マンモス 謝恩 大廉売」の文字が大きく表されていた。

(ここで、前者において、「大地をゆるがす半期に一度の」の部分は、他に比べ小さい文字で二段に分けて横書きされており、後者おいて、「謝恩」の部分は、他に比べて小さい文字で縦書きされており、輪郭内に表されていた。)

また、「マンモス」の文字の後ろには登録商標であることを示すマルR記号が付されていた。更に、前記各文字の後ろには、正面から見た写実的なマンモスの図形が比較的大きく表されており、商品として掲載されているテレビの何台かの画面にもマンモスの図形が写っていた。

(ii)第2の使用態様:広告チラシIIには、テレビ、ビデオカメラ、電話機、パソコン、パソコン用プリンター等の商品が掲載されており、そこに使用していた商標は、

「第85回 マンモス 謝恩 大廉売」の文字が表されていた。

(ここで、「謝恩」の部分は、他に比べて小さい文字で縦書きされており、輪郭内に表されていた。)

また、「マンモス」の文字の後ろには登録商標であることを示すマルR記号が付されていた。更に、前記文字の下部には、キャラクター化されたマンモスの図形が5種類の異なった表情で比較的大きく表されている。加えて、広告チラシに掲載されている商品の所々にもキャラクター化されたマンモスの図形が表されている。

(3)請求人の主張(弁駁の理由)

第1の使用態様及び第2の使用態様共に、「謝恩大廉売会(セール)」の名称を表しているに過ぎず、商品「電気通信機械器具,電子応用機械器具」について、これらの出所を表示したものとは言えない。

商標の本質は、自他商品識別力にあるところ、本件商標を構成する「マンモス」なる語は、「巨大な、とてつもなく大きい」を意味する英語であり、例えば、「マンモスフリーマーケット」、「マンモスセールアルバム」、「マンモスバザー」等のように、現実に商品の販売に関する大規模な催し物を示すために用いられている。

被請求人(商標権者)が本件商標の使用証拠として提出した、例えば、第1の使用態様及び第2の使用態様の広告チラシを見るに、「マンモス/謝恩/大廉売」とあり、これに接する需要者は、その文字に相応して、大規模なバーゲンセールの開催を想起することが容易に想像つくものの、これがチラシに掲載の商品「電気通信機械器具,電子応用機械器具」の出所を表示していると認識するものとは言い得ない。

むしろ、商品「電気通信機械器具,電子応用機械器具」と具体的関連性を有し、出所を表示する機能を有するものは、まず、個々の商品に直接付された個々の商標、例えば、「SHARP」や「MITSUBISHI」であり、また、これらの商品を仕入れし、販売する主体である「マツヤデンキ」又はその「図形」と言うべきである。

(4)審判における判断

審判においては、次のように述べて、請求人の主張を認めませんでした。

即ち、第1の使用態様及び第2の使用態様の広告チラシにおけるマルR記号が付された「マンモス」の文字表記からすると、いずれの広告チラシにおける「マンモス」の文字は、自他商品識別標識である商標として認識されるものであり、必ず請求人の主張するように大規模なバーゲンセールの開催を想起する「マンモス/謝恩/大廉売」の文字として需要者に認識され、広告チラシに掲載の商品の出所表示として認識されないと断定することはできないから、この点についての請求人の主張は採用しない。




2. 取消2006-30563(登録第2137690号商標の登録取消審判事件)

(1)本件登録商標:

商標「REGENERATIVE/リゼネレィティブ」(これら二つの文字を二段書きしたもの)

指定商品「第4類 せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類」

(2)登録商標の使用の態様

商品の容器に使用していた商標は、

「QURAS」の文字を大きく表し、その下部に「REGENERATIVE」の文字と、各商品により「LOTION」、「ESSENCE」又は「MASSAGE&MASK」の文字とを二段に配して表されていた。

これらの商品の包装箱に使用していた商標は、 「キュラス」の文字と、各商品により「リゼネレイティブローション」、「(化粧水)」の各文字、「リゼネレイティブエッセンス」、「(美容液)」の各文字並びに「リゼネレイティブマッサージ&マスク」、「(パック)」の各文字が、夫々、3段に表されていた。

(3)請求人の主張(弁駁の理由)

(i) 「REGENERATIVE」ないし「リゼネレイティブ」は、「再生させる」等を意味する形容詞である。また、上記正確な語義を知らなくとも、その文字構成から「Re−Generate・・・再び生成する」の形容詞形(「ive」で終わる)といった程度の語義を見出すことは困難ではない。

このような形容詞「REGENERATIVE」を、上記肌や歯等の身体に直接用いる本件商標の指定商品の分野において、その商品の普通名称や品質(内容物)、形状等を表す語を同書同大に後続させて用いた場合、両者に修飾関係が生じ、(肌や歯等を)「再生させる」や「回復させる」効能や用途をもった商品等であることが観念されるに過ぎず、特定の出所が想起される余地はない。

(ii) 「リゼネレイティブ」、「REGENERATIVE」の語は、いずれも「ローション」、「LOTION」、「エッセンス」、「ESSENCE」、「マッサージ&マスク」、「MASSAGE&MASK」といった商品の品質(内容物)、形状、用途等の同書同大の表示を伴った態様で用いられているのであり、文法的にも形容詞としてのみ機能し、また、取引者、需要者からもそのように認識される。

従って、被請求人(商標権者)の言う「リゼネレイティブ」、「REGENERATIVE」は、単に、同社の販売に係る化粧水、美容液、パックが、如何なる効能又は用途をもっているかを表すために付されている記述的商標に過ぎず、同表示をもって特定の出所が認識されることはもちろん、信用が蓄積することなどもあり得ない。

(4)審判における判断

審判においては、次のように述べて、請求人の主張を認めませんでした。

即ち、本件商品に使用されている「REGENERATIVE」及び「リゼネレイティブ」の各文字は、配置されている夫々の位置及び態様に照らせば、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たすものであって、本件商標と社会通念上同一のものと言うべきである。

そして、請求人の上記主張、即ち、本件使用は記述的表示に過ぎず、出所が認識されることはない、信用が蓄積することもないという主張に対して、以下の通りに述べました。即ち、

確かに、「REGENERATIVE」の文字は、「再生させる」等を意味する英単語であることが認められる。しかし、大修館発行「ジーニアス英語辞典第4版」によれば、「regenerative」及び「regenerate」の語は、「中学学習語」・「高校学習語」・「大学生・社会人に必要な語」のいずれのカテゴリーにも含まれておらず、加えて、例えば、商品の容器や包装箱等に、代表的出所標識を上段に表記し、その下段に本件商品と同様に個別商標と商品名等を表示することは、化粧品を取り扱う業界においても少なからず用いられる表現手法と言うべきであるから、取引者・需要者が本件商品の包装箱、容器に表されている「REGENERATIVE(リゼネレイティブ)」の文字と「LOTION(ローション)」、「ESSENCE(エッセンス)」あるいは「MASSAGE&MASK(マッサージ&マスク)」の文字に接した場合、これらの文字が商品の品質・効能・用途等を具体的に表すような格別の意味合いを認識するとは認められないとして、請求人の主張をしりぞけました。




検討

上記2件の取消審判は、いずれもその使用が登録商標の使用、即ち、自他商品識別標識としての機能を発揮する使用と認められた例です。

第1の審判例は、その登録商標が「マンモス」である場合に、これを「謝恩」、「大廉売」の文字と共に使用していたものです。しかし、「マンモス」の使用の態様は、他の文字とは独立しており、かつ、「マンモス」の文字の後ろに登録商標であることを示すマルR記号が付されていました。即ち、「マンモス」が登録商標であることを明記していたわけです。

第2の審判例は、その登録商標が「REGENERATIVE/リゼネレィティブ」である場合に、これを「LOTION(ローション)」、「ESSENCE(エッセンス)」、「MASSAGE&MASK(マッサージ&マスク)」の文字と共に使用していたものです。しかし、「REGENERATIVE/リゼネレィティブ」は、上記文字の上部に二段書きにされており、他の文字とは独立した態様となっていました。また、「REGENERATIVE/リゼネレィティブ」の意味内容は、一般的に理解されているものではないと判断されました。

商標ニュースレターNo.1で紹介いたしました3件の審決例と比べてみますと、今回紹介いたしました2件の審決例では、いずれも、他の文字とは独立した態様で使用されているという点で相違しています。また、1の審決例では、その文字の後にマルRの記号が付されていたという点で大きく異なっています。

以上のことから判断致しますと、使用する商品の品質、産地、効能等を表す可能性のある商標、又は、使用する役務の質、提供の場所、効能等を表す可能性のある商標を使用する際には、その商標と他の文字とが一体となって特定の意味を生ずる場合には、何らかの形態でその商標が独立して使用されていると認められるように使用する必要があるということです。更に、その商標の後にマルRの記号を付すことも重要になると考えます。もし、このような記述的商標と言われる商標の権利を所有しており、かつ、使用しているなら、上記のことに十分注意する必要があると考えます。また、現在の使用の態様に問題があると考えた場合には、その使用の態様を見直す必要があるのではないかと考えます。

以 上