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商標ニュースレター   No.9

今回は二段書き商標の使用に関する取消審判をいくつかご説明致します。二段書き商標は、全体で一つの商標ですから、上下別々に使用すると登録商標の使用ではないと判断されて不使用ということで取り消されてしまうことがあります。以下、いくつか例を挙げてご説明致します。




1. 取消2004-31152(登録第4391476号の登録取消審判事件)

(1)本件登録商標

「PRIDE」の欧文字と「プライド」の片仮名文字とを二段に併記してなり、第18類「かばん類,袋物」を指定商品とするものである。

(2)審判における判断

審判においては、提出された使用に関する各証拠をまず整理し、下記の商標が使用されていたと判断しました。

(i)カタログの表紙下部中央に、「2004 SUMMER COLLECTION」と「PRIDE」の文字が表示されており、第3頁上部に「Bag」の商品名と価格が表示されている。

(ii)カタログの表紙下部中央に、「2004 SPRING & SUMMER COLLECTION」と「PRIDE」の文字が表示されており、第2頁に「バッグ」の写真及びその下部に「Bag-左 1431-80701 #38」等が表示されている。

(iii)カタログの表紙上部中央に、「PRIDE」と「2004-2005 AUTUMN & WINTER COLLECTION」の文字が表示されており、第2頁下部に「Bag 1443-80703 col.89 \29,400(本体\28,000)」等が表示されている。

(iv)受注ブックの表紙上部中央に、「Autumn/Winter Collection 2004/05」と「PRIDE」の文字、その左下部に「OSAKA 3/2(TUE)〜5(FRI) KING OSAKA BRANCH」及び「TOKYO 3/9(TUE)〜12(FRI) KING TOKYO HEADOFFICE」の表示が認められ、第2頁に「GOODS 頁行14-027-01 品番 1443-80701 BAG」と商品見本が記載されている。

(v)受注ブックの表紙上部中央に、「2004 WINTER COLLECTION」の文字と「PRIDE」の文字、その左下部に「OSAKA 5/11tue 12wed 13thu」及び「TOKYO 5/18tue 19wed 20thu」の表示が認められ、第2頁には「GOODS 1845-80067 BAG」と商品見本図が記載されている。

そして、審判においては、以下のように判断しました。

上記の「Bag(バッグ)」に使用されている商標「PRIDE」は、「プライド」の称呼と「誇り、自尊心」の観念を生ずるものであって、本件商標により生ずるものと認められる「プライド」の称呼と「誇り、自尊心」の観念と同じくするものであるから、本件商標と社会通念上同一の商標の使用と言えるものであると判断して、その登録を取り消しませんでした。




2. 取消2005-30543(登録第1668372号の登録取消審判事件)

(1)本件登録商標

「サーパス」の片仮名文字と「SERPAS」の欧文字とを上下2段に横書きしてなり、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。)」を指定商品とするものである。

(2)審判における判断

商標法第50条第1項は、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図例からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」を使用した場合も、登録商標の使用と認める旨規定している。

(i)乙号証には、「SURPASS」の表示がある。

しかして、「SURPASS」の文字(語)は、「超える」の意味を有する英語であるのに対して、本件商標構成中「SERPAS」の文字(語)は特定の観念を有さない造語と認められる。

そうとすれば、両者は、観念において相違するものであるから、「SURPASS」の文字を使用しただけでは、本件商標と社会通念上同一の範囲にある商標を使用したものということはできない。

(ii)乙号証には、「サーパス」、「サーパスシリーズ」、「サーパススキンケアシリーズ」、「サーパスナチュール」及び「サーパスプラスナチュール」の表示がある。

しかして、「サーパス」からは、造語である「SERPAS」よりも、むしろ、「超える」の意味を有する英語「SURPASS」を想起し得るものであるから、これらの文字を使用しただけでは、本件商標と社会通念上同一の範囲にある商標を使用したものということはできない。

このように判断して、被請求人(商標権者)は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を本件審判請求に係る指定商品について使用していたものと認めることはできないとして、本件登録商標を取消しました。




3. 取消平成10-31285(登録第802576号の登録取消審判事件)

(1)本件登録商標

下記の構成からなり、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品とするものである。

(2)審判における判断

被請求人(商標権者)が提出した証拠に表されている商標は、「GUEREAN」の欧文字のみを書した態様からなる。

ところで、登録商標の使用に際しては、商品の具体的な性状に応じて、適宜、変更を加えることは取引上一般に行われているところではあるが、その使用が登録商標の使用と認められるのは、あくまで、当該登録商標と社会通念上同一と認められる範囲内の使用に限られるものであり、二段併記の構成からなる商標の場合にあっては、各構成文字の観念が同一のときのみ、商標の有する識別性に影響を与えないものとして、その一方の使用であっても、当該商標登録を使用しているものと解されているところである。

本件商標において、「ゲラン」の片仮名文字からはフランスの香水・化粧品会社あるいはその使用に係る商品の商標(Guerlain)を想起し得るものであるが、「Guerean」の欧文字は、英語、フランス語又はドイツ語に照らしてみても親しまれた成語を表すものではないから、これより、特定の観念を生ずるものとは認められない。また、その称呼も親しまれて用いられている英語又はローマ字読みに従っても、直ちに「ゲラン」の称呼を生ずるものとは言い難いから、これより上記した「ゲラン」を想起するものともいえない。

そうとすれば、本件商標を構成する「Guerean」の欧文字と「ゲラン」の片仮名文字とは、その観念を同一にするものではないから、「GUEREAN」の欧文字のみを書した態様からなる使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標と言うことはできず、「GUEREAN」の欧文字のみの使用をもって本件商標を使用しているものと言うことはできない。

このように判断して、被請求人(商標権者)は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を本件審判請求に係る指定商品について使用していたものと認めることはできないとして、本件登録商標を取消しました。




検討

審判便覧において、登録商標の使用と認められる事例及び登録商標の使用と認められない事例が挙げられています。ここで取り上げている二段併記の商標に関しては、下記のような場合に、一方の使用が、登録商標と社会通念上同一の使用と認められると記載されています。

(例2) 登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用

例えば、登録商標が「太陽/SUN」の二段併記のとき、「太陽」又は「SUN」のいずれかの使用は、登録商標の使用と認められる。

これによれば、二段併記の一方の使用が登録商標の使用と認められるのは、上段及び下段の観念が同一であるときです。このように観念が同一であれば、上記のように「タイヨウ」と「サン」と称呼が異なっていても、どちらか一方の使用は登録商標の使用と認められるとしています。

1. 取消2004-31152で取り上げた本件登録商標は、「PRIDE」の欧文字と「プライド」の片仮名文字とを二段に併記してなるものです。ここで、「PRIDE」の欧文字からは、「誇り、自尊心」の観念を生じ、「プライド」の片仮名文字からも、同一の観念を生じます。

この場合は、まさに上記の審判便覧に記載の態様と同一です。

従いまして、該取消審判においても、「PRIDE」の欧文字のみの使用は登録商標の使用と認めているわけです。

2. 取消2005-30543で取り上げた本件登録商標は、「サーパス」の片仮名文字と「SERPAS」の欧文字とを上下2段に横書きしたものです。ここで、「SERPAS」の欧文字は造語であり、特定の観念を有しません。一方、「サーパス」の片仮名文字からは、「超える」の意味を有する「SURPASS」を起想するとしています。

従いまして、「サーパス」の片仮名文字の使用は、登録商標の使用とは認められないとしています。要するに、上段と下段との観念が同一ではないので、どちらか一方の使用は、登録商標の使用ではないとしているのです。上記審判便覧に基づくものと考えられます。

また、商標権者は、「SURPASS」を使用していましたが、これは、登録商標の「SERPAS」とは異なるので、もちろん、登録商標の使用とは認められていません。

3. 取消平成10-31285で取り上げた本件登録商標は上記の通りであり、「Guerean/ゲラン」の欧文字と片仮名文字の二段併記商標です。ここで、「Guerean」の欧文字は造語であり、特定の観念を有しません。一方、「ゲラン」の片仮名文字からは、フランスの香水・化粧品会社あるいはその使用に係る商品の商標(Guerlain)を想起し得るものであるとしています。

そして、このように双方が同一の観念を有していない故、その一方の「GUEREAN」の欧文字のみの使用は、登録商標の使用には該当しないとしています。この判断も上記の審判便覧の記載に合致しています。

以上のことをまとめますと、二段併記商標の場合には、上段と下段の各部の観念(意味)が同一であれば、いずれか一方の使用は登録商標の使用と認められますが、上段と下段の各部の観念(意味)が異なれば、いずれか一方の使用は登録商標の使用とは認められないということになります。従いまして、後者の場合には、必ず、上段と下段とを一体的に使用していなければ、取消を免れることはできないということになります。

二段併記商標の権利を所有している方は注意を要すると考えます。

以 上