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異議2012-900071 異議の決定

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登録第5458694号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。

結論

登録第5458694号商標の商標登録を維持する。

理由

1 本件商標 本件登録第5458694号商標(以下「本件商標」という。)は、「LOFT AIR」の欧文字を標準文字で表してなり、平成23年7月4日に登録出願、第24類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同年11月22日に登録査定、同年12月16日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第8号及び同第15号に該当し、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)商標法第4条第1項第8号について 本件商標が「LOFT」の文字を含む商標である点は争う余地のない事実である。この「LOFT」の部分は、申立人の名称である「株式会社ロフト」の英文名称である「THE LOFT CO., LTD」(甲第2号証)の略称と認められる。更に「LOFT」の文字は、日本最大の雑貨専門店の店舗名称の略称であって、略称として、少なくとも本件商標の出願時はもとより、更に継続して本件商標の査定時においても、日本全国で広く知られるに至っていたものと認められる。しかも、本件商標の出願書類等には申立人の承諾書は提出されていない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第15号について 本件商標は、申立人の使用に係る著名な商標「LOFT(LoFt)」を含んでいるため、本件商標に係る指定商品に本件商標を使用すると、申立人又同人と経済的あるいは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所の混同を生ずるおそれがある。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。

3 当審の判断

(1)「LOFT」「ロフト」の周知性について 申立人提出の証拠及び同人の主張によれば、申立人は、1996年(平成8年)に設立された生活雑貨の小売業を営む法人であること、英文名称を「THE LOFT CO.,LTD.」とすること、日経MJがまとめた「2010年度小売業調査」において小売業売上高ランキングで113位に次ぐ売上高(約844億円)であること、日経MJが実施した「第39回日本の専門店調査」(2010年度)の業種別経営指標ランキングにおいて、「生活雑貨」で「総売上高経常利益率」が4位、「3.3平方メートル当たり直営店売上高」が1位など4つの全ての指標が4位以内であること、それらの調査において「ロフト」と表記されていること、及び、申立人は、同人の経営する店舗に「LoFt」の文字からなる別掲の商標を掲げて営業し、平成23年現在、全国の主要都市に69店舗を展開していること、さらに、別掲の商標はAIPPI・JAPANが2004年ころに発行した「日本有名商標集」に掲載されたことを認めることができる。 以上のことからすれば、「ロフト」は、申立人の略称として、本件商標の登録出願の日前ないし査定時において、小売業に関心を有する者の間において相当程度認識され、また、別掲の商標は申立人の経営する店舗を表示するものとして需要者の間で広く認識されているものと判断するのが相当である。 しかしながら、欧文字「LOFT」(大文字と小文字が異なる表記も含む。以下、この項において同じ。)はインターネットにおいて申立人の店舗名又は申立人の略称として用いられることがあるものの、申立人の略称として用いられているのは専ら片仮名の「ロフト」であることから、欧文字「LOFT」は、申立人の略称として需要者の間で広く認識されているものと認めることはできない。 さらに、一般の書体で表された欧文字「LOFT」が申立人の業務に係る役務又は商品を表示するものとして広く認識されていると認め得る証左の提出がないこと、同「LOFT」は別掲の商標と態様が大きく異なること、「LOFT(ロフト)」の語が「屋根裏部屋」などの意味を有する成語であることからすれば、一般の書体で表された欧文字「LOFT」は、申立人の業務に係る役務又は商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 (2)商標法第4条第1項第8号について、 本件商標は、上記1のとおり「LOFT AIR」の文字からなり、「LOFT」と「AIR」の文字からなるものと理解されるとしても、各構成文字は、同じ書体、同じ大きさでまとまりよく一体的に表されており、該文字から生じる「ロフトエア」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものであるから、全体が一体不可分のものとして認識されるものと判断するのが相当である。 そして、本件商標は、その構成中に「LOFT」の文字を有しているものの、上記(1)のとおり、該文字は申立人の著名な略称と認められないものであるから、他人(申立人)の著名な略称を含む商標ということはできない。 なお、申立人は、ビルの名称も本号の「他人」に該当する旨主張しているが、本号の「他人」とは申立人もいうように「自然人又は法人」と理解されており、ビルの名称が自然人又は法人を表すものでないことは明らかである。さらに、「社団」とは「一定の目的をもって組織された自然人の団体で、その団体自身が個々の構成員から独立した単一体としての存在を有するもの。」(有斐閣 法律用語辞典[第3版])であるから、ビルの名称は「法人格なき社団」ともいえず、他にビルの名称が本号の「他人」に該当すると解すべき理由は見いだせないから、申立人の主張は採用できない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものではない。 (3)商標法第4条第1項第15号について 本件商標は、その構成中に「LOFT」の文字を有しているものの、該「LOFT」の文字は別掲の商標と態様を大きく異にするものであること、「LOFT(ロフト)」が「屋根裏部屋」などの意味を有する成語であること、該文字は上記(1)のとおり申立人の業務に係る役務又は商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることができないものであること、及び本件商標が上記(2)のとおり全体が一体不可分のものとして認識されるものであることをあわせみれば、商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして別掲の商標又は申立人を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。 (4)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、商標法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。