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異議2012-900123 異議の決定

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登録第5468757号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。

結論

登録第5468757号商標の商標登録を維持する。

理由

1 本件商標 本件登録第5468757号商標(以下「本件商標」という。)は,「TweetAgency」の欧文字を標準文字で表してなり,平成23年6月1日に登録出願,第35類「インターネット上でおこなうブランド戦略・マーケティング・販売促進のための企画及び実行の代理,インターネット上でおこなう商品の販売促進・役務の提供促進の企画及び実行の代理」を指定役務として,平成23年12月21日に登録査定,同24年2月10日に設定登録されたものである。

2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は,以下のとおりであり,いずれも現に有効に存続しているものである。 (1)登録第5188811号商標(以下「引用商標1」という。)は,「TWITTER」の欧文字を標準文字で表してなり,2007年4月26日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,平成19年10月26日に登録出願,第38類「コンピュータ・携帯型コンピュータ及び有線又は無線の通信機器を利用したユーザー間のリアルタイムで且つ双方向のオンラインによる通信,電子メール・インターネット上のインスタントメッセージ又はインターネット上のウェブサイトによりメッセージを交換するための通信,チャットルーム形式の電子掲示板通信,その他の電子掲示板による通信,コンピュータを利用したメッセージ及び映像による通信,ウェブログ上の電子掲示板通信,携帯電話による通信,グローバルコンピュータネットワークを利用した電子計算機端末による通信,その他の電気通信,放送」,第42類及び第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として,平成20年11月13日に登録査定,同年12月12日に設定登録されたものである。 (2)登録第5327291号商標(以下「引用商標2」という。)は,「TWEET」の欧文字を標準文字で表してなり,2009年4月16日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,平成21年6月11日に登録出願,第38類「コンピュータ・携帯型コンピュータ及び有線又は無線の通信機器を利用したユーザー間のリアルタイムで且つ双方向のオンラインによる通信,電子メール・インターネット上のインスタントメッセージ又はインターネット上のウェブサイトによりメッセージを交換するための通信,メッセージの送信のための通信,チャットルーム形式の電子掲示板通信及びこれに関する情報の提供,ウェブログ上の電子掲示板通信及びこれに関する情報の提供,その他の電子掲示板による通信及びこれに関する情報の提供,コンピュータを利用したメッセージ及び映像による通信,携帯電話による通信,グローバルコンピュータネットワークを利用した電子計算機端末による通信,その他の電気通信,放送」,第41類,第42類及び第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として,平成22年4月28日に登録査定,同年6月4日に設定登録されたものである。 (3)登録第5332541号商標(以下「引用商標3」という。)は,「ツイート」の片仮名を標準文字で表してなり,平成21年7月16日に登録出願,第38類「コンピュータ・携帯型コンピュータ及び有線又は無線の通信機器を利用したユーザー間のリアルタイムで且つ双方向のオンラインによる通信,電子メール・インターネット上のインスタントメッセージ又はインターネット上のウェブサイトによりメッセージを交換するための通信,メッセージの送信のための通信,チャットルーム形式の電子掲示板通信及びこれに関する情報の提供,ウェブログ上の電子掲示板通信及びこれに関する情報の提供,その他の電子掲示板による通信及びこれに関する情報の提供,コンピュータを利用したメッセージ及び映像による通信,携帯電話による通信,グローバルコンピュータネットワークを利用した電子計算機端末による通信,その他の電気通信,放送」,第41類,第42類及び第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として,平成22年5月21日に登録査定,同年6月25日に設定登録されたものである。 (4)登録第5278420号商標(以下「引用商標4」という。)は,「ついったー」の平仮名を標準文字で表してなり,平成21年6月9日に登録出願,第38類「コンピュータ・携帯型コンピュータ及び有線又は無線の通信機器を利用したユーザー間のリアルタイムで且つ双方向のオンラインによる通信,電子メール・インターネット上のインスタントメッセージ又はインターネット上のウェブサイトによりメッセージを交換するための通信,チャットルーム形式の電子掲示板通信,その他の電子掲示板による通信,コンピュータを利用したメッセージ及び映像による通信,ウェブログ上の電子掲示板通信,携帯電話による通信,グローバルコンピュータネットワークを利用した電子計算機端末による通信,その他の電気通信,放送」,第42類及び第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として,平成21年10月14日に登録査定,同年11月6日に設定登録されたものである。 以下,引用商標1ない4をまとめていうときは「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するから,同法第43条の2第1号によりその登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)申立人及び申立人の業務に係るサービス(役務)について ア 申立人は,米国カリフォルニア州に本拠をおく会社であり,平成18年(2006年)3月からインターネット上で「リアルタイム・ショートメッセージサービス」と呼ばれるサービスをウェブサイト「Twitter」を介して提供している(甲第6号証)。 イ ウェブサイト「Twitter」では,ユーザーが140文字以内の短いメッセージを投稿することができ,このメッセージは,リアルタイムでウェブサイト上の所定の場所に表示され複数のユーザーがこれを閲覧することができる。このメッセージを閲覧したユーザーは返答メッセージを投稿することが可能で,この投稿,閲覧,返答を繰り返すことでコミュニケーションすることができる申立人のサービスは,今までにない非常にユニークなものである(甲第7号証)。 ウ 日本では,平成18年(2006年)7月16日から前記サービスを開始した(甲第8号証)。日本での前記サービスの開始から,申立人の運営するウェブサイト「Twitter」の登録ユーザー数は増加の一途をたどり,申立人の集計によると平成19年(2007年)12月31日時点での日本国内の登録ユーザー数は46,622人であった(甲第8号証)。 しかし,「週刊ダイヤモンド」(第30頁)によれば,平成22年(2010年)1月には,日本国内の登録ユーザー数は,500万人を超えたとの推計が発表されている。 また,2010年12月度のニールセン調査によれば,「Twitter」の利用者は1,290万人,同様のサービスを提供している業界大手のmixi,Facebookと比較した場合,群を抜いている(甲第8号証の2)。 (2)引用商標の著名性について ア 平成22年(2010年)1月頃には,「Twitter」は,一般人のみならず,総理大臣,芸能人,政治家,評論家などに幅広く利用され,新聞・雑誌等のマスコミでも大きな注目を集めた。 平成22年(2010年)1月18日から20日の期間で,株式会社富士通総研が実施した「Twitter(ツイッター)利用状況調査」によれば,Twitterの認知度は70.2パーセントにのぼる(甲第9号証)。 イ 申立人の提供するサービスが極めてユニークであったこと,また,サービス開始からわずか約3年半で利用者が急増したこともあり,ウェブサイト「Twitter」及び本サイト上で提供されるサービスは,主に「Twitter(TWITTER)」又は「ツイッター」の表記でインターネットブログサイトや新聞・雑誌・TV等のメディアに連日紹介されるようになった。例えば,平成22年(2010年)1月23日発行の「週刊ダイヤモンド」では,「ツイッターの旅」と題する40頁にわたる特集等がある。以降,「Twitter(ツイッター)」に対する注目はますます高まり,新聞・雑誌・テレビ番組等の特集,Twitter(ツイッター)関連書籍の出版等が続く(甲第10号証ないし甲第22号証)。 ウ 以上,申立人の提供するミニブログ,コミュニティサイトの提供,SNSは,本件商標の出願時点(2011年3月31日)及び登録時点(2011年11月18日)おいて,日本国内において広く認識されており,申立人が提供する著名なサービスで使用する引用商標も著名性を有していたものである。 エ 「TWEET」及び「ツイート」は,遅くとも2009年7月28日には使用されている(甲第23号証)。 2010年8月13日からは,Twitterでのリンク共有をより簡単にするために「ツイート」ボタンがリリースされ,「TWEET」及び「ツイート」という言葉は,申立人のサービスを表象するものとして多くの利用者に深く浸透している(甲第24号証)。 オ 上述のように,引用商標は,申立人の業務を表象するものとして広くユーザーに認識されているので,特に引用商標2の「TWEET」を含む本件商標がその指定役務に使用された場合,申立人の提供する役務と出所の混同を生じるおそれが極めて高いものである。 (3)本件商標について 本件商標は,申立人の業務を表象する著名な商標「Tweet」を含むものであり,「Agency」は,「代理店」などを表すものであるから,該文字部分は特段需要者の注意を惹くことがなく,本件商標に接する需要者は,「Tweet」の部分に注目する。 結果,本件商標は,申立人の業務と何らかの関連性があるものと誤認,混同される可能性が極めて大きいものである。 よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものである。

3 当審の判断

(1)申立人の使用に係る商標(引用商標)の著名性について 申立人提出に係る甲第6号証ないし甲第24号証(枝番号を含む。)によれば,以下の事実を認めることができる。 ア 申立人は,米国カリフォルニア州で設立された会社であり,平成18年(2006年)3月からインターネット上でウェブサイト「Twitter」において,いくつものネットワークやデバイスを使うことのできる「リアルタイム・ショートメッセージサービス」を提供している。 上記ウェブサイト「Twitter」(ツイッター,ついったー)は,ブログと電子メールの中間的な位置づけのコミュニケーション・ツールで,140文字以内の短文のみに対応する特徴をもつ,インターネットが接続可能なパソコンや携帯電話などで利用することができるものである。 そして,ウェブサイト「Twitter」(ツイッター,ついったー)では,ユーザーが短いメッセージを投稿することができ,他のユーザーは,その投稿を閲覧し又は返答が可能なものである(甲第6号証,甲第7号証及び甲第9号証)。 イ 申立人によるリアルタイム・ショートメッセージサービス「Twitter」は,我が国では平成18年(2006年)7月16日にそのサービスが開始されて以来,ウェブサイト「Twitter」(ツイッター,ついったー)の登録ユーザー数は増加の一途をたどり,同22年1月には500万人を超え,一般に広く利用され,新聞,雑誌等のマスコミでも注目されるようになり,その認知度は70.2%に達している(甲第9号証及び甲第10号証)。 そして,上記ウェブサイト及びリアルタイム・ショートメッセージサービス「Twitter(ツイッター,ついったー)」は,インターネットや雑誌等のメディアに多数紹介されている(甲第9号証ないし甲第22号証)。 また,「ツイッター用語集」には,「Tweet(ツイート=つぶやき)」について,「ツイッターへの投稿を行うこと,あるいはその内容。字数は140字以内に制限されている。」との記載がある(甲第10号証)。 ウ 申立人は,「Twitter」のウェブサイトで「Tweet」という単語を2009年7月28日に使い始め(甲第23号証),また,「Twitter」でのリンク共有をより簡単にするために「ツイート」ボタンをリリースしたものである(甲第24号証)。 エ まとめ 以上によれば,引用商標1及び4については,申立人の業務に係るウェブサイト又はリアルタイム・ショートメッセージサービスを指称するものとして,本件商標の登録出願時には,既に,申立人の業務に係る役務を表示する商標として,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたといえるものであって,その状態は,本件商標の登録査定時においても継続していたものと認められる。 しかしながら,引用商標2及び3は,申立人の業務に係るリアルタイム・ショートメッセージサービスへの投稿,若しくは投稿することを表す,一種の機能的動作等を表す語として使用されていることから,これらも,申立人の業務に係る「Twitter」と関連づけて認識される場合があるとしても,本件商標の出願時において,申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることができない。 (2)本件商標と引用商標との類似性について ア 本件商標について 本件商標は,「TweetAgency」の欧文字を表してなるところ,その構成は,同書,同大,等間隔にまとまりよく表されているものであり,これより生ずる「ツイートエージェンシー」の称呼も無理なく一連に称呼できるものである。 そして,たとえ,その構成中の「Agency」の欧文字が「代理店,特約店」等の意味を有する英語(プログレッシブ英和中辞典 小学館)であるとしても,本件商標に係る構成においては,構成全体をもってその指定役務の出所を表示する商標として認識されるものとみるのが相当である。 そうとすれば,本件商標は,構成文字全体に相応して「ツイートエージェンシー」の称呼のみを生ずるものであって,構成全体としては特定の観念は生じないものである。 イ 引用商標について 引用商標1は「TWITTER」の欧文字を,引用商標4は「ついったー」の平仮名を表してなるところ,これらの文字からは,「ツイッター」の称呼を生ずるものである。 そして,「TWITTER」又は「ついったー」は,申立人の業務に係る役務を表示する商標として我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認められるものであるから,申立人の業務に係るウェブサイト又はリアルタイム・ショートメッセージサービスとしての観念を生じさせるものである。 また,引用商標2は「TWEET」の欧文字を,引用商標3は「ツイート」の片仮名を表してなるところ,これらの文字からは,「ツイート」の称呼が生じ,「TWEET」の欧文字は,「〈鳥が〉さえずり声」の意味を有する英語であることから,「TWEET」の欧文字及びその読みを表した「ツイート」の片仮名からは,「〈鳥が〉さえずり声」の観念を生ずるものである。 ウ 本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標との類否について検討するに,本件商標と引用商標1及び4とは,それぞれの構成において,外観上,相紛れるおそれはないものである。 そして,本件商標から生ずる「ツイートエージェンシー」の称呼と,引用商標1及び4から生ずる「ツイッター」の称呼とは,その音数及び音構成において明らかな差異を有するものであるから,それぞれを一連に称呼しても,語調,語感が明らかに異なり,称呼上明確に区別し得るものである。 また,本件商標からは,特定の観念が生じないものであるから,観念においては引用商標1及び4と比較することができない。 そうとすれば,本件商標と引用商標1及び4とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。 次ぎに,本件商標と引用商標2及び3とを検討するに,それぞれの構成において,外観上,相紛れるおそれはないものである。 そして,本件商標から生ずる「ツイートエージェンシー」の称呼と,引用商標2及び3から生ずる「ツイート」の称呼とは,「エージェンシー」の音の有無において明らかな差異を有するものであるから,それぞれを一連に称呼しても,語調,語感が明らかに異なり,称呼上十分区別し得るものである。 また,本件商標からは,特定の観念が生じないものであるから,観念においては引用商標2及び3と比較することができない。 そうとすれば,本件商標と引用商標2及び3とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,互いに相紛れるおそれのない非類似の商標と認められる。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 引用商標1及び4は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る役務を表示する商標として我が国の取引者,需要者の間に広く認識されているものと認められる。 そして,本件指定役務がインターネット上で提供されるものであるから申立人の業務に係る役務と関連性がないとはいえないとしても,前記のとおり,本件商標と引用商標1及び4とは,互いに相紛れるおそれのない別異の商標であるから,商標権者が本件商標をその指定役務に使用しても,これに接する者に申立人の引用商標を想起,連想させるものではないというのが相当である。 イ 引用商標2及び3は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る役務を表示する商標として我が国の取引者,需要者の間に広く知られていたものと認めることができず,かつ,前記のとおり,本件商標と引用商標2及び3とは,非類似の商標と認められる。 そうとすれば,商標権者が本件商標をその指定役務に使用しても,これに接する者に申立人の引用商標を想起,連想させるものではないというのが相当である。 ウ 以上のとおり,本件商標は,これを商標権者が本件商標をその指定役務に使用しても,申立人の引用商標を想起,連想させるものではなく,申立人又は同人と経済的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であるかのように,その役務の出所についてと混同を生じさせるおそれはないものである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。 (4)まとめ 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。